イマシブ記事

「身体」をアップデートし続ける人々――市場規模100億円を突破した「3Dモデル経済圏」が解き明かす、イマーシブの真価

【イントロダクション:100億円という臨界点】

2026年2月、ピクシブ株式会社が発表した「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2026」は、メタバース界隈に大きな衝撃を与えた。年間取扱高が104億円に達し、前年比179%という驚異的な成長を遂げたのだ。

かつて「没入(イマーシブ)」という言葉は、高性能なHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被ることと同義だった。しかし、このデータが示しているのは、ハードウェアの進化以上に、人々が「バーチャルな自分」という存在にどれほどの価値を見出しているかという、マインドセットの劇的な変化である。

【データの深層:なぜ「1人あたりの購入数」が増えているのか?】

PANORAの記事でも触れられている通り、特筆すべきは「1人あたりの注文件数」の増加(年間27.4件)だ。これは、ユーザーが1体のアバターを買って終わりではないことを意味している。

イマーシブな体験において、アバターは単なる「ガワ」ではない。それは日々の気分や、訪れるワールド(TPO)に合わせて着替える「衣服」であり、自分を表現するための「アイデンティティ」そのものだ。

  • 周辺情報: 最近のVRChat等のコミュニティでは、特定のクリエイターによる「ブランド化」が進んでいる。リアルなファッション業界と同様に、「新作が出るたびに購入する」というロイヤリティの高い層が市場を牽引しているのだ。

【「10万円プレイヤー」が支える、高度な自己投資】

白書によれば、年間10万円以上を支出するユーザー層が、5万円〜10万円の層を上回ったという。これは、3Dモデルが「安価なデジタルコンテンツ」から、こだわり抜くべき「資産・投資」へと昇華した証拠と言える。

5,000円〜7,000円というボリュームゾーンの価格帯は、クリエイターが心血を注いだフルセットのアバターに相当する。これに加えて、さらに数千円の衣装やアクセサリーを「改変(カスタマイズ)」して組み合わせることで、世界に一人だけの「自分」を作り上げる。このプロセスこそが、究極のイマーシブ体験へと繋がっている。

【イマーシブ・メディアとしての視点:境界線の消失】

この現象は、もはや「オタク文化」の一端ではない。 既存のBOOTHユーザー(同人誌や物理グッズ購入者)が3Dモデルを買い始めているというデータは、「物理的な所有」と「デジタルな体験」の境界線が消失しつつあることを示唆している。

「着る」「触れる」「そこに居る」という感覚が、VR技術によって物理的制約を超えたとき、100億円という数字は通過点に過ぎなくなるだろう。

【結びに:私たちは「デジタルな身体」で生きていく】

今回の白書から見えるのは、爆発的な市場成長の先にある「新しい人類の姿」だ。 イマーシブな世界に深く潜れば潜るほど、私たちは自分の姿を自在に定義し、そこに惜しみない投資を行うようになる。

BOOTHが今後予定している「ライブラリの検索性向上」や「新しい決済手段の導入」は、私たちの「クローゼット」をより豊かにし、メタバースでの生活をより日常的なものに変えていくだろう。

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